本学の教員が「日本人類学会大会 公開シンポジウム」で研究成果を発表しました

 2024年10月14日(月)、大阪市の大阪大学中之島芸術センターで開催された、第78回日本人類学会大会 公開シンポジウム「分野横断的な研究手法から探る、近世大坂都市住民の生活?病気?死」―うめきた再開発地区の発掘調査からわかる江戸時代大坂の人々の暮らし―(主催:日本人類学会?大阪大学大学院人間科学研究科)で、本学地域みらい学科の長岡明人(ながおか ともひと)教授が最新の研究成果を発表しました。
 長岡教授は人類学の研究者で、南米ペルーなど国内外の遺跡から発見された人骨を調査?鑑定してきた実績があり、文部科学省の科学研究費助成事業(科研費)のプロジェクトで、考古学、歴史学、古病理学、人類学、分子生物学などの専門家から成る研究チームの代表を務め、大阪市北区の梅田墓(大深町遺跡)で発見された江戸時代から明治初期にかけての約1,700体の人骨から、当時の都市住民の生活、病気、死などのライフヒストリーを探る研究を進めています。
 梅田墓(大深町遺跡)は、JR大阪駅の北西側に位置する再開発地区「うめきた」の一角にあり、2017年からの発掘で多数の人骨が出土し大きな話題となりました。
 古くから地域の墓地だった梅田墓は、19世紀中ごろに拡張され、明治時代初めまで約50年間存続しました。
 調査された墓地は北側の土葬累積域と南側の木棺墓域に分かれており、江戸時代の文献記録では、市中で行き倒れた身元不明人や、伝染病による死者を大穴に投げ込んだという記述があることから、この土葬累積域がそれにあたる可能性があると考えられています。
 調査チームでは、1858年のコレラ、1862年の麻疹(はしか)などの疾病の大流行(パンデミック)による死者が埋葬されたと想定しており、発掘された人骨からコレラ菌のDNAが検出されないか調査を進めています。
 また、考古資料のタンパク質を解析する質量分析技術(古代プロテオミクス)により、発掘された人骨の歯に付着した歯石から、当時の人が何を食べていたのか、どのような口腔内細菌を保有したのかなどを調べています。
 社会の関心の高い、梅田墓(大深町遺跡)に関する各分野の研究成果が発表された今回の公開シンポジウムの内容は、報道機関の注目を集め、産経新聞(2024年11月10日)をはじめ、全国各地の新聞に、研究成果を伝える記事が掲載されました。
 《長岡教授のコメント》
 梅田墓(大深町遺跡)の調査時期は、劲球网感染症の感染拡大時期と重なり、感染症に対する社会の関心が高い時期でした。各分野の最先端の研究手法から、江戸末期に流行した感染症の正体を明らかにし、近世都市の実像に迫るとともに、ヒトの感染症の進化過程やヒトと病気の関係の歴史を解明したいと考えています。

公開シンポジウム抄録集(PDF)はこちら
※抄録集(PDF)は長岡朋人教授が代表を務める研究チームの提供です。無断転載はできません。

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